あなたは「ありがとう」や「やあ!」などの用途でクラクションを使用することはありませんか?
道路交通法上、これらのクラクションは認められておらず、周囲のクルマや環境に悪影響を及ぼしている可能性があります。
そもそもクラクション(ホーン)は何のためにあるのか?
クラクション(ホーン)とは?
クラクションとは、クルマに備え付けられている警笛のことです。道路交通法上では「警音器」とされています。またホーンともいわれることも多いです。
※本記事では以降「クラクション」という呼称に統一します。
もともとは「クラクソン」という製造会社の商標名だったようですが、現在は一般的な用語になっています。
クラクションは危険を回避する時のためにある警笛
クラクションは、道路交通時の危険回避のための装備です。
これは道路交通法第54条第2項には以下のように明記されています。
車両等の運転者は、法令の規定により警音器を鳴らさなければならないこととされている場合を除き、警音器を鳴らしてはならない。
ただし、危険を防止するためやむを得ないときは、この限りでない。
突発的な危険回避以外にも、「警笛鳴らせ」という道路標識がある場所を通るクルマは、クラクションを鳴らすことが義務付けられています。
この看板は、見通しの悪いカーブやトンネルなどで、安全な通行のために対向車に自車の存在を知らしめることが求められる道路に設置されています。
クラクション誤用の例
いずれもよく見られる用例ですが、以下の用途でのクラクション使用は道路交通法違反になります。
サンキュークラクション
最も多くみられる事例ではないでしょうか?
例えばロードサイドから本線に合流したいクルマが、本線のクルマから前を譲ってもらい合流するとき。
また右折待ちのクルマが前のクルマに「お先にどうぞ」とされたとき。
お礼代わりに「ププッ」とクラクションを短く鳴らして進んでいくクルマを見かけるシーンは少なくありません。
あいさつクラクション
路地などを通行中、知り合いを見つけた際に「やあ!」といった具合にクラクションを鳴らす。
また、大型車が同僚?などとすれ違いタイミングでクラクションで挨拶するシーンを目にすることもあります。
どけよクラクション
某名鉄の電車ホーンではありませんが…。
高速道路や幹線道路で前のクルマに追いついたとき。またすれ違うことが困難な細い路地で対向車が来てしまったときに。
「そこどけや」と言わんばかりに威圧的にクラクションを鳴らすクルマも少ないながら存在します。
クラクション誤用が及ぼす影響
周りのクルマ・人がびっくりする
クラクションの音はかなりの大音量です。
クラクションの音を聞くと、当事者以外のクルマや歩行者などもドキッとします。
その音量や音質から、否が応でも耳に入ってしまいますので、関係のないクルマや人にとってははた迷惑です。
トラブルの原因になり得る
極端な例ですが、クラクションを発端としたこのような事件が実際に発生しています。
東大阪クラクション殺人事件(ひがしおおさかクラクションさつじんじけん)とは、1977年(昭和52年)に発生した殺人事件である。別名を東大阪警笛殺人事件ともいう。
(中略)
1977年(昭和52年)8月27日17時頃、大阪府東大阪市内の市道は幹線道路の抜け道であったため帰宅ラッシュで混雑していた。この時、前走車が発進したにもかかわらず1台のライトバンが発進しようとしなかった。そのため、後方のライトバンを運転し、自宅まで100メートルであった帰宅途中の会社員の男性(当時37歳)は、前方のライトバンに警笛(クラクション)を鳴らした。この行為は日常的にどこにでも見られるものであった(ただし厳密には法律上警笛の目的外使用にあたる)。
しかし、ライトバンを運転していた元暴力団員(当時32歳)はクラクションを鳴らされたことに腹を立て、会社員のライトバンに詰め寄って所持していた拳銃で会社員の首に発砲した。会社員は病院に搬送されたが同日18時に死亡し、元暴力団員は助手席にいた愛人(当時33歳)と逃亡した。この事件は「クラクション殺人」として大きく報道され、社会問題化した。
Wikipedia「東大阪クラクション殺人事件」より
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%9D%B1%E5%A4%A7%E9%98%AA%E3%82%AF%E3%83%A9%E3%82%AF%E3%82%B7%E3%83%A7%E3%83%B3%E6%AE%BA%E4%BA%BA%E4%BA%8B%E4%BB%B6
これは極端な例ではありますが、クラクションを鳴らす場面や相手の受け取り方によっては怒りを買うことがあります。
事件化していないだけで、小競り合いレベルではもっとたくさんの事例があるのではと推測されます。
単純にうるさい、騒音問題
前述の通り、クラクションはその用途上とても大きい音量で鳴り響きます。
この音は道路上の当事者のみならず、近隣の住民にとって騒音になり得ます。
クラクションは本来の用途で
今まで記してきた通り、本来の用途以外でのクラクション使用は周囲の迷惑になるだけでなく、そもそも道路交通法に違反する行為です。
本来の目的でのみ使用するよう、ドライバーは心掛ける必要がありますね。