筆者は一昨年の12月にアウディ A5スポーツバック(2014年式)を購入し、現在も継続して所有しています。自動車評論家ではありませんが、いちクルマ好き視点でこのクルマの特徴をご紹介していきます。
アウディ A5スポーツバックとは
アウディ A5スポーツバックの概要
A5スポーツバックとは、ドイツに本社多くアウディが発売する中型乗用車です。
ベースとしては2ドアクーペのA5(2007年発売開始)であり、その派生車種として、カブリオレ(オープンカー)とともに2009年から発売が開始された4ドアクーペモデルです(厳密にはリアハッチがあるので「5ドア」ですが…)。
さらにA5の元を辿ると、同社の基幹セダンであるA4をベースとしていることがわかります。
要は、スタンダードで実用的・万人受けするセダンをベースに、よりスポーティーに・ドレッシーに仕上げた車種と言えます。
ヨーロッパの乗用車分類方法に当てはめると、いわゆるDセグメントに属します。
ここはメルセデス・ベンツ CクラスやBMW 3シリーズなど、各メーカーの売れ筋車種が鎬を削る激戦区です。
「ドイツ御三家」のひとつと言われるアウディが、A4とともにその激戦区に送り出しているのがA5系の各車です。
アウディ A5スポーツバックのスペックや簡単な諸元
筆者の所有する車両は2014年式、巷では8T後期と言われることが多いモデルです。
8T型は大きく分けて前期と後期に分かれます。
現行ではF5型としてモデルチェンジしていますが、本記事では筆者が所有する8T後期に関して取り上げてまいります。
ボディサイズとしては、4730×1855×1390mm。
兄弟車と言える同じ年代のA4(B8)が4720×1825×1440mmであることと比べると、ややワイド&ロー。
実際に運転していても、車幅に関してはやや気を遣う機会が出てくるサイズだと感じます。
エンジンは、CDNと名付けられた2リッターの直列4気筒直噴ターボ。
近年の主流である「ダウンサイジングターボ」の流れを汲むパワーユニットといえ、211ps(155kW)、35.7kg・m(350N・m)を絞り出します。
車重こそ1710kgと重量級ではありますが、お家芸のクワトロとも相まって公道で楽しむ分には充分なパフォーマンスを発揮します。
また、JC08モード燃費でも13.6km/リットルと、重い図体とクルマの性格からすると以外に燃費は悪くありません。
これは実際に乗っていても感じ、リッター10kmは超えることが多いです。
余談になりますが、筆者はA5スポーツバックの前、2012年式のBMW F30 328iに乗っていました。
328iのJC08モード燃費は15.2kmとされていますが、実燃費はA5の方がはるかに良い印象です。
328i(同世代以降のBMW車全般に共通するかもしれませんが)には、走行モードを以下の3種から選択できるようになっています。
- ECO PRO
- COMFORT
- SPORT
恐らく328iの燃費カタログ値はECO PROモードで出したものと推測します。
実用上、ECO PROモードでは非常にかったるく、常にCOMFORTモードで使用していた故の燃費だったかもしれません。
※328iについては、別記事として詳細にまとめたく思っています。
本題に戻りまして、A5スポーツバックのトランスミッションは「Sトロニック」と呼ばれる7速のデュアルクラッチトランスミッションです。
小難しく書きましたが、とてもざっくり言うと2本ペダルのATっぽいもの、と捉えてしまってもいいでしょう。
機構自体はMTを自動化したものですが、AT限定免許で問題無く乗れます。
上記通り、機構的にはMTであり、かつ「デュアルクラッチ」の名の通り2つのクラッチを用い動力伝達の効率化を図ったトランスミッションのため、その気になればかなり小気味よく加減速することができることが特徴の機構です。
アウディ A5スポーツバックのインプレッション
アウディ A5スポーツバックの外装
個人的には非常に好みです。
国産・輸入車含め近年のクルマは無機質なキツめの造形にすることがトレンドのようですが、このクルマはどこか有機的な温かみのある美しさを感じます。
BMWのような直線多用ではなく、程よくうねったキャラクターラインや、なだらかなルーフラインなどがそのような印象を与えているのかもしれません。
この有機的さは、マセラティをはじめとするイタリアンブランドに通ずるものをほんのり感じたりもします。
かなりマニアックな着眼点で話すと、A5スポーツバックにはルーフモールがありません。
おそらく出回っている多くのクルマにはルーフモールがあることが一般的かと思いますが、この点がとても美しいルーフラインを作り出す一要素になっているのかもしれません。
いわゆる4ドアクーペにカテゴライズされるクルマですが、実車をみると確かに「ほぼクーペ」な印象です。
これは写真ではなかなか伝わらなく、実際筆者も実車を見るまで甘く見ていました。
クーペといえば、4ドアにも関わらずサッシュレスドア(ウインドウの外枠が無い)になっています。
サッシュレスドアであるだけで窓周りがだいぶスッキリした印象になりますね。
また、アウディお得意のLED使いはさすがです。
テールランプ自体の造形に多少の古さを感じますが、とりわけDRL(デイタイムランニングライト=デイライト)の美しさは筆舌に尽くし難いものがあります。
アウディ A5スポーツバックの内装
非常に高品質で、かつ洗練されています。
車内から見てもやはりクーペっぽい包まれ感があります。
実は筆者がこのクルマ購入を決めた決定打となったのが、この車内で感じる「クーペ感」でした。
筆者は以下の記事でまとめるほどクーペ、それも4人がしっかり乗車できるものが大好きです。
家庭事情で泣く泣く2ドアクーペは買えませんが、現車確認に行った時、4ドアでありながらクーペを感じられる感覚に瞬時に魅了されていました。
また、ブラックとメタリックなシルバー、きめ細かな手触りのレザーを適材適所にあしらった内装はとてもオシャレです。
所有してみて何よりも感動したのは、スイッチ類の操作感。
ウインカーを動かす時、またウインドウスイッチの手応えがガッチリしまくっていて(誉れです)、操作するたびにさり気なく「良いモノ感」を主張してきます。これがたまりません。
各種ボタンもカッチリした操作感でとても上質感があります。
これも前車(F30 328i)との比較になりますが、328iではこの辺の操作感がチープな感じがしてモヤモヤしていました。前世代のE90系ではいかにもドイツ車らしい硬質感だったのですが…。
ガッチリ感でいうと、そもそもドアを閉めた時の音はかなりの重厚さです。
前後ドアともに「ドンッ」という図太い音で閉まります。
クルマ好きの感性をとても刺激してくる音で素晴らしいです。
その他、ステアリングやシフトノブのレザーがきめ細かく、手にしっとりと馴染みます。
筆者の個体はホワイトに近い色のレザーシートを装着していますが、これまた車内の雰囲気を明るくしてくれ、ステアリングやダッシュボードなどのダークブラウンの色味とのマリアージュも素敵です。
シート自体も立体的な作りで、ランバーサポートなど細かなドライビングポジションの設定が可能です。
唯一、メインディスプレイが少し時代を感じさせる所がネックでしょうか。
近年のクルマでは軒並み大画面化が進んでいる中、ちょっとショボく感じるのが正直な所です。画質も少し物足りないかも。
アウディ A5スポーツバックの走り
いかにも質実剛健なドイツ車らしいフィーリングです。
ボディがっしり、足回りしっかりなのに乗り心地が良い。
ごく低速では軽々な操作感のステアリングですが、少し速度を上げると意外にもしっかりした手応えに変わります。
足回りもがっちり。以前代車で一定期間乗ったE46 3シリーズと同じベクトルにあると感じました。
硬めでしっかりしているのに、細かなショックはしなやかにいなす。
さわりが柔らかくて、荷重が増えるにつれて硬くなっていくようなセッティングでしょうか。
そこそこ大柄なクワトロゆえに車重はあり、決して軽快な動きはしません。
しかしながら、ドライバーが意図した通りに操れるニュートラルさがあります。
後輪駆動のようなキビキビ感はなく少し物足りなさはありますが、クワトロらしいオンザレール感は、これはこれで走っていてとても心地良い。
エンジンは、心躍るような演出はありません。
しかしながら低回転から強いトルクを引き出せ、とても実用的で高効率なユニットであると言えそうです。
ちなみに、しばしば「楽しくない」と言われることもあるクルマです。
それはこのパワーユニットの特性と、遮音性が高い作りになっていること、加えてオンザレール感からくるものと推測しました。
高回転型のエンジンをブン回して、アクセルオンでグングン旋回していく…といったことに快感を覚える人にとっては確かに退屈なクルマと言えそうです。
どちらかというと感性よりも理性に働きかけてくる、ハイテクを堪能するようなクルマだと感じました。
一点、良くも悪くもあるのが「Sトロニック」のフィーリングです。
同じアウディ内にスポーツグレードの「RS」や「S」を抱えているがゆえに、汎用グレードのA5にはかなりコンフォートよりのチューニングをしていると感じました。
例えば、通常モードでの走行時のシフトアップは「トルコンAT?」と思うほどゆったりとショックなく変速します。
恐らく、通常のトルコンATやCVTに慣れたユーザーに違和感が無いようそれらに近づけたのでしょうが、個人的には肩透かしを食らったようで少し拍子抜けしてしまいました。
ただ、スポーツモードにした時にはデュアルクラッチらしい電光石火のシフトチェンジを見せてくれます。
アウディ A5スポーツバックの維持費
輸入車だし、車格的にも決してリーズナブルとはいきません。
ですが、後述するトランスミッションの点を除けばかなり現実的なレベルの維持ハードルです。
普通にサラリーマン家庭でもオーナーライフが楽しめています。
排気量は2リッターなので、自動車税も一般的なレベル。
昨年、所有して1回目の車検をショップで受けましたが、バッテリー交換も含んで20万円程度の出費でした。
個体差もありますが、消耗品や油脂類の定期メンテナンスを怠らなければ、かつてのイタ車のように壊れまくる可能性はかなり低そうです。
維持にあたっての意外なメリットとして、ドイツ御三家は世界的にタマ数が多いため、OEMパーツなんかが意外と大量に出回っていることがあります。
特に前車の328iではその恩恵を受けることが多く、走行安全性に支障が無い箇所はかなり安くカスタムが可能でした。
A5スポーツバックもおおむねその傾向があると感じます。
ネックとしては、一番の懸念がトランスミッションです。
前述したとおり、A5シリーズには「Sトロニック」というデュアルクラッチトランスミッションが搭載されています。
これが故障するとかなり高額の修理費用が掛かるようです。
詳細は「Sトロニック 故障」あたりで検索していただくと把握できますが…。
アウディの親会社にあたるフォルクスワーゲンにおいても、同じような機構をもつ(というか同じ?)「DSG」というトランスミッションがありますが、「Sトロニック」と併せて故障事例が結構な数引っかかってきます。
この点は個体差や乗られ方にも影響されるので、運ゲー要素があります。
幸いなことに筆者の個体は至極快調に機能しており、当面は安心して乗れそうな予感です。
もし類似したトランスミッションを搭載した車種を購入する際は、しっかりと試乗をして状態を見極めることが重要になるでしょう。
アウディ A5スポーツバックのイマイチな所
2年も所有していると、いくつか気になる点が出てきます。
何よりも気になるのが、ドライビングポジションがしっくりこないこと。
具体的には、運転席左足の張り出しがとても大きいために、左足が中央に押しのけられます。
その影響なのか、ペダル各種も若干右に寄っているように感じます。
よって運転時は左足がO脚、右足がX脚になったような変な体制になり、意外と疲れます。
この点、前車までのBMWは非常に優秀でした。
シートに腰かけて右足を伸ばせばそこにアクセルペダルがぴったり配置されている。
オルガンペダルだし。
そうそう、A5シリーズはこの車格にもかかわらず吊り下げ式ペダルなんです…(白目)。
A5スポーツバックの場合は小指側でギリ踏めるか、ブレーキに右側が引っかかる。
運転中にはアクセルペダルを踏んでいることが多いので、この点が地味にストレスになります。
筆者の個体では後付けのフットレストがインストールされており感じませんでしたが、デフォルトではフットレストがやけに遠いとの口コミも多いです。
続いて、シートメモリーがないこと。
これもこの車格ではデフォルトで備えといていただきたい(泣)。
複数人が運転するような環境の方には地味に痛いポイントかと思います。
前述したとおり、シートの調整が細かくできるので、ベストセッティングが都度お釈迦になるのが結構辛いです。
また、トランクがハッチバックになっていることによる影響。
リアガラスごとガバッと開くので荷物の積み下ろしは簡単ですが、それゆえリアドア自体の重量が結構あり、力の弱い人だと開閉が大変です。
そして構造上天井より高く跳ね上がるため、駐車場によっては頭上スペースに当たってしまう可能性があります。
筆者はこれで一度トランクを傷つけてしまいましたw
加えてリア用のドラレコがすっきり取り付けられません。
配線はどうしても飛び出しちゃうし、リアドアの開閉で外れてきそう。
細かなUIでいうと、サイドミラーの開閉操作がなんか独特です。
所見では???となって、数分閉じることができませんでした。
またMMIのダイヤル操作も最初は戸惑いました。
なぜなら、慣れ親しんできたBMW iDriveと正反対にスクロールされるんですからw
アウディ A5スポーツバックの故障
筆者が経験した故障は2年間で1度だけ。
それは…
なんとサイドミラーの鏡が剥がれ落ちましたwww
鏡はサイドミラーの土台のようなところに接着剤で張り付いているようで、鏡の部分だけペロッと剥がれました。
最初は左側のみ脱落しましたが、右側もグラグラで脱落秒読みだったので一緒に交換しています。
急を要したために正規ディーラーにて、両側で3万円台中盤の費用が掛かったことと記憶しています。
そもそも10年以上マイカーを所有していて初めて経験するトラブルで驚きましたが、この現象が発生した要因であろうということにさらにびっくり。
前述のミラー調整スイッチのUIのせいですw
このスイッチ、真ん中は結露防止?のヒータースイッチになってるんですね。
前のオーナー時代からこの位置に常時設定していたようで、その熱で徐々に接着が弱まっていたのでは?とのディーラーの見解でした。
これは無理だわw
バリ所見殺し。
まとめ
A5スポーツバック、なかなかに良いクルマです。
飽きたクルマは半年でも見切りをつけて乗り換えてきた筆者ですが、所有期間はすでに2年を軽く超えました。
かなり品質が高く高級感も有り、かつそれほど人と被るクルマでは無い。
クーペらしいスタイルで特別感もあります。
さらには中古市場では非常にお手頃な個体が多くあります。
それゆえにリセール価格は期待できないでしょうが、それは輸入中古車の場合はほぼすべてのクルマに共通しています。
ポイントは、走りが感性に訴えてくる類のものではない点、また「Sトロニック」という、ある意味爆弾を抱えている点をどう捉えるかでしょうか。
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