Dセグメントの基幹車種の一つであるBMW 3シリーズ。筆者はF30という2012年式の328i ラグジュアリーを自費で購入し3年間所有していたことがあります。
モータージャーナリストではないオーナー目線での正直なインプレッションをまとめました。
BMW 3シリーズとは
BMW 3シリーズの概要
BMW 3シリーズとは、ドイツに本社多くBMWが発売する中型乗用車です。
世界的にも非常に人気があり、BMWのなかでも長年エース級の活躍をしてきた超重要なモデルです。
その歴史も非常に深く、初代のE21といわれる型式は1975年に販売が開始されています。
現代では、なんと7代目まで引き継がれており、現行のG20も非常に完成度の高いスポーツセダンとして君臨しています。
ボディタイプとしては、4ドアセダンを基本として、ステーションワゴンもラインナップしています。
少し前までは派生モデルとして2ドアクーペも存在していましたが、現在は4シリーズとして独立しました。
また、かなり影が薄いのですが「グランツーリスモ」なるロングホイールベース+やや車高が高くなった5ドアハッチバックもF30世代に存在していました。
これは不人気だった故か希少で、とはいえなんとも言えない魅力がある車種なので今後記事にまとめようかと思っていますw
ヨーロッパの乗用車分類方法にあてはめると、いわゆるDセグメントに属します。
「ドイツ御三家」でいえば、メルセデス・ベンツ Cクラス、アウディ A4・A5が競合してくるあたり、非常に競争の激しいセグメントと言えるでしょう。
なお、本記事ではBMW 3シリーズ=筆者が所有していた6代目 F30型328i ラグジュアリーとして展開していきます。
ちなみに筆者は以下のBMW車を所有していたことがあります。
- E46 330ci Mスポーツ
- E92 335i
- F30 328i
BMW 3シリーズのスペックや簡単な諸元
筆者の所有する車両は2012年式、巷ではF30前期と言われることが多いモデルです。
F30型は大きく分けて前期と後期に分かれていますが、同じ期でも細かな機能の追加やアップデートなど、年式によって変わっている点があります。
F30はデザインテーマや装備の違いで以下5種のラインナップがあります。
- スタンダード
- スポーツ
- ラグジュアリー
- モダン
- Mスポーツ
ボディサイズとしては、4624×1800×1440mm。決して小さくは有りませんが、常識的なレベルのサイズ感。
特に横幅は、機械式駐車場などの事情を考慮し、ドアハンドルの形状変更で日本仕様のみ1800mmに抑えているようです。
またBMWの伝統に則りドライバー視点での見切りが良好なので、日常でも手足のように操ることができていました。
エンジンは、N20B20Aと名付けられた2リッターの直列4気筒直噴ターボ。
近年の主流である「ダウンサイジングターボ」の流れを汲むパワーユニットといえ、245ps(180kW)、35.7kg・m(350N・m)を絞り出します。
ちなみに、このパワーユニットはより汎用グレードの320iとほぼ一緒の設計のようですが、328iに搭載されている方はよりハイパフォーマンスなものになっています。
車重としては1560kg。
軽量とは言えませんが、このセグメントのドイツ車としては平均的なレベルと言え、エンジンのパフォーマンスを考慮すると充分スポーティーな走りが可能です。
JC08モード燃費カタログ値は15.2km/リットル。
これを見ると結構優秀な数値ですが…実燃費は下道だと10km切ってたかなあ…。
推測ですが、カタログ値は「ECO PRO」という走行モードでの測定値であると推測します。
328i(同世代以降のBMW車全般に共通するかもしれませんが)には、走行モードを以下の3種から選択できるようになっています。
- ECO PRO
- COMFORT
- SPORT
実用上、ECO PROモードでは非常にかったるく、常にCOMFORTモードで使用していた故の燃費だったかもしれません。
トランスミッションは8速のオートマチック。
デュアルクラッチなどではない純粋なオートマチックですが、これが非常に完成度が高いです。
変速スピードは早く、かつ制御も賢い。
ギアの段数も多いこともあり、高効率なエンジンとの相乗効果でかなり気持ちよくドライブすることができます。
余談ですが、BMWの名前の由来はバイエリッシュ・モトーレン・ヴェルケ(Bayerische Motoren Werke)。
直訳すると、バイエルンのエンジン屋。
通りでBMWのエンジンは気持ちいいわけです。
BMW 3シリーズのインプレッション
BMW 3シリーズの外装
4ドアセダンのトラディッショナルなパッケージングを踏襲しつつ、都会的でシュッとしたデザインです。
キャラクターラインやボンネットの切れ目など、直線基調のラインが力強さをアピールしています。
またボンネットの先端を下げることで低重心感やロングノーズさが強調され、伝統的なFRスポーツセダンであることを主張。
Mスポーツグレードになると、より一層筋肉質な造形になります。
鋭いヘッドライトの中には、近代BMWのアイデンティティであるエンジェルアイ(「コロナリング」や「イカリング」と呼ばれることも)がLEDでインストールされています。
このエンジェルアイはコーディングによってDRL(いわゆるデイライト)として作動させることも可能です。
テール周りは、ひと目では5シリーズと見紛うほど高級感のある造形になりました。
これは5シリーズオーナーからしたらちょっと複雑な心境でしょうか…。
筆者が所有していた個体は「ミネラルグレーメタリック」という深いグレーの塗装。
これがまた素晴らしい色合いで個人的には大好きでした。
あまり周りのクルマと被らないカラーです。
ただ、マツダの「マシーングレー」はほぼ同じ色合いに見えますw
黒ほど洗車キズなどに神経質になる必要がなく、かつグレー故に汚れが目立ちにくい。
それなのに手入れをしてあげると奥深いツヤが出まくってくる、なんとも魅力的な色でした。
BMW 3シリーズの内装
シンプルですが、各種機能は実用上非常に使い勝手が良いです。
実は先代E90系のクーペE92に乗っていたことがありますが、その次代から比べてかなり現代風になりました。
先代であった木目使いのややおっさん臭いところがなくなり、アルミ調の華飾が入りさわやかに。
またナビ画面が独立したような造形に変わり、これも今っぽいデザインです。
ナビといえば、iDriveがCICという2世代目のものになって使い勝手が格段に上がりました。
E92自体は初代のCCCというものが搭載されていましたが、これはまあ微妙なUIでしたw
CICは地図データこそ古いものの、使い慣れるとダイヤルで直感的に操作できるiDriveがとても便利に感じてきます。
ただ少し残念なのが、各種スイッチ・ウインカーレバーなどの操作感。
この点は先代E90系のほうが高級感が有りました。
CCCのUIはお粗末なものでしたが、iDriveダイヤルは回したときの触覚を電子で表現する凝りよう!
この点めちゃくちゃ先進的だと思ったのですが、このことを触れている記事などは見たこと無いんだよな…。
ジャーナリストは何やってるんだ…w
そういえば、F30前期のウインカーレバーはこの年代のBMWらしく中立に戻って来るタイプ。
ですが、少し試乗したF30後期は中立しないタイプだった記憶があるが…モデルの途中で仕様変更があったかもしれません。
続いてはシートについて。
「サドルブラウン」というカラーの本革シートが搭載されていました。
調べた限り、BMWお得意の「ダコタレザー」のはず。
シボ(革のシワ的なもの)が深くしっかりした革質で、耐久性がありそうです。
シートカラーに合わせて、グローブボックスやドアにもサドルブラウンのカラーが配されていてとても統一感があります。
個人的に内装は黒以外のレザーシートがほぼマスト要件なので、上品なブラウンで統一されたF30の内装はお気に入りでした。
シート関連で少し残念だったのが、サポートが弱い形状だったこと。
これは筆者の個体(ラグジュアリー)特有の問題です。
具体的には、サイドサポートやふくらはぎ下の調整がなく、サポートも弱い平面的な形状をしていました。
この点は「スポーツ」や「Mスポーツ」というグレードだとスポーツタイプのシートになるので、仮に同じ車種を手に入れるならば迷わずそれらを選びます。
シート形状を除けば、328iは理想的なドライビングポジションを取ることができます。
ごく自然なペダルレイアウトであり、アクセルペダルがオルガン式なので長時間運転士ていても疲れが少ないです。
この点はスポーティーさを大事にしているBMWらしいところではないでしょうか。
他にはステアリングです。
ステアリング表面の革質がちょっとお粗末なものなのです。
具体的には、表面が顔料で覆われてビニールっぽい質感であり、このクラスの有名ブランドのクルマとしてはショボく感じてしまいます。
ただし、この点はMスポーツになると専用ステアリングになり、表面もきめ細かなしっとりした質感になっています。
なおさらMスポーツにしとけばよかった…。
もう一点、USBジャックの給電がクソしょぼいです。
USBジャックはコンソールボックスの中にありますが、iPhoneを接続してナビを使用していると1時間で数%程度しか充電されませんでしたw
BMW 3シリーズのパッケージング
大人4人が快適に乗れて、結構荷物が載ります。
定員は5人なので、いざとなったら後部座席に3人乗れます。
流石に5人乗車では窮屈ですが、4人乗車する限りはどの席でも快適に過ごすことができるレベルの広さです。
ただ後部座席のリクライニングは不可です。
トランクは一定以上の容量があると感じます。
後部座席を立てた状態で480Lの荷室容量。
なお後部座席は分割して倒すことができるため、それによりさらなる積載量アップが可能です。
ちなみに筆者はこのクルマで2馬力ゴムボートフィッシングにも行っていました。
2名乗車で、ゴムボートをトランクに積み、船外機を後部座席片側にうまい事収めて、更に釣具も一式載せて。
3シリーズセダンでゴムボートフィッシング、それも船外機有りで行く人は日本で筆者ぐらいでしょうw
船外機は海外製のスレンダーなもので比較的積みやすいタイプのものではありましたが、性質上縦に積まなければならないものをしっかり積載することができました。
BMW 3シリーズの走り
軽快、かつそこそこ速いです。
まず、エンジンが想像以上に気持ちいいものでした。
以前に乗っていたE92は直列6気筒のN54というエンジンで、これは非常に高性能かつ快感指数が高めでした。
これを経験していたゆえに直4は微妙そう…と高をくくっていましたが、しっかり高回転まで淀みなく回り、パワーも十二分で結構気持ちいいです。
さすがエンジン屋さん。
それでいて低回転でも充分以上トルクが出せるので、低速でもストレスなく運転できます。
ステアリングのフィーリングは好みが分かれるかと思います。
往年のずっしり来るBMWのステアリングフィールを知っている身にとっては、軽くて少し物足りないと感じるはずです。
しかし、根底にあるその滑らかさやフィールは確かにBMWらしいなと感じるところもあり、次第に馴染んできたことを記憶しています。
ただ、触感以外ではFR(後輪駆動)らしいニュートラルなハンドリングが楽しめます。
これは前後の重量配分が50:50に限りなく近いことも影響していることでしょう。
この点はドイツ御三家ではBMW特有のものです。
気になったのは足回りのセッティングです。
どうもフワフワなんですよねえ…。
Mスポーツじゃないグレードだからというのも有り、固くて重いランフラットタイヤを履きこなすために意図的に柔くしているのもあるのか。
具体的にいうと、コーナーでそこそこロールします。
また高速で段差を超えた時など、一発で収まらずに何度かバネが伸び縮みします。
それゆえ、高速道路のジャンクションなど中速で長めのコーナーを走っているとき、道路の繋ぎ目でもあろうものならちょっと横っ飛びするような心もとなさがあります。
この点、重厚な走りが信条であろうドイツ車で、しかも超定番である3シリーズでこのような味付けとは正直拍子抜けしました。
なんというか、よく捉えると全体的に軽快方向に向かおうと尽力している感じです。
日本メーカーっぽい味付けに近づき、古き良きドイツ車らしさは薄れていると感じました。
ただ、これはもしかしたらグレードの問題もあるかもしれません。
前述した通り、筆者が所有していた個体は「ラグジュアリー」。
このグレードは4本通しでのタイヤ、ノーマルサスペンションを装着しています。
これに対して「Mスポーツ」の場合は前後サイズ違いのタイヤを履き、Mスポーツ専用に固められた専用の足回りを装着しています。
この違いを踏まえると、Mスポーツならば往年のがっちり重厚な走りを楽しめるのかもしれません。
前に乗っていたE92ではMスポーツでないノーマルグレードでしたが、それでも充分しっかりした素晴らしい足回りでした。
それゆえMスポーツでは硬すぎるかと推測してラグジュアリーを選びましたが…じっくり試乗して比較したかったなと少し後悔しています。
BMW 3シリーズの維持費
輸入車なので格安とは行きませんが、やりようによっては結構お手頃です。
排気量も2リッターなので至極一般的なレベルです。
車検でいうと、1回通した車検はBMWに強いショップにお願いしましたが、正味14万円程度でした。
正味というのは、合計では23万円台かかったのですが、これは後述するドアミラーのトラブルによりアッセンブリー交換を行ったことによります。
ミラーが9万円程度の費用でしたので、それを差し引いて14万円程度であったと言えるかと思います。
維持にあたっての意外なメリットとして、ドイツ御三家は世界的にタマ数が多いため、OEMパーツなんかが意外と大量に出回っていることがあります。
特にBMW 3シリーズにおいては国内外問わずありふれたクルマで、走行安全性に支障が無い箇所はかなり安くカスタムが可能でした。
その個体数ゆえに、整備ノウハウが豊富なショップが多いことも維持の上で大きいメリットです。
足回りやトランスミッション、エンジンなど、クルマのコアとなる箇所はオーソドックスな構成なのでかなり信頼性は高いと言えそうです。
気になる点としては、電気系。
筆者が体験した不具合は後述しますが、ちょこちょこトラブルが起こる可能性があります。
持病としてよくヒットするのは、ABSセンサーの故障です。
ざっと検索しただけで結構な数の故障事例があるようで、これが発生すると2桁万円レベルの費用がかかるようです。
持病レベルでは無いようですが、仕組み上非常に怖いのがiDriveの故障。
iDriveが導入されてからのBMW車は、ナビ・エンターテイメント以外にも車両状態の管理も一元して行っています。
故にiDriveがイカれてしまうとかなり致命的です。
また、細かな点としては標準装着のランフラットタイヤが少し曲者で、交換するとなると通常のタイヤよりも高額です。
仮にパンクしても一定距離をそのまま走行できることは大きなメリットですが、固く重いため通常のラジアルタイヤに交換することも一手です。
※筆者は脱ランフラットしていました。
BMW 3シリーズのイマイチな点
柔い乗り味やシートなどについては前項までに記したとおりです。
その他の気になる点についてまとめます。
まずは、運転席から見た前方下部の視界があまりよろしくない点です。
デザイン上、ボンネットの先端が低くなっていることは外観で触れました。
その弊害で、ドライバー視点だとボンネットがどこまで続いているかちょっと把握しにくいです。
また、非常に数が多い車種ということもあり希少性はありません。
よく同じクルマにすれ違います。
筆者はそうでしたが、ある程度人と違うクルマに乗りたいという人にとっては少し物足りない点かと思います。
さらに、USBジャックの給電能力がとても低いです。
USBジャックは前席の肘掛けの中にありますが、繋ぎながら地図アプリを使っていると充電がほぼ進みません。
そして細かいことですが、アイドリング時のエンジン音がディーゼルっぽいガラガラした音質です。
BMW 3シリーズの故障
筆者は3年間の所有で2.5回ほど故障がありました。
1つは、前述したドアミラー関連。
具体的に、右のドアミラーが開いたまま閉じなくなりました。
これは車検時に右ミラーをアッセンブリー交換し、9万円ほどの費用がかかりました。
2つめは、マフラーのフラップ開閉用アクチュエーターの死亡。
328iは2本出しのマフラーで、うち一方には開閉可能なフラップが付いています。
これはコールドスタート時に一定時間フラップを閉じることで、効率よく暖気できるようにする狙いだそうです。
ある日窓を開けて運転していると、どうやらマフラーからカラカラ音がする…と気付き、近所の整備工場で点検した結果上記のトラブルと判明しました。
これはアクチュエーターの交換で完治し、費用的には2万円前後だったと記憶しています。
最後に、故障と言えるか微妙な事象が。
フロントタイヤの片べりが酷かったことです。
新品に近い山があるタイヤで納車されたのですが、納車後1年でフロントタイヤのスリップサインが出現。
リアタイヤはまだまだ山があるのにこれはおかしいな?と思ってショップで点検した結果、やたらトーイン(内股)になっていたことが判明しました。
これはアライメント調整で適正値に直してもらい、それ以降片べりは解消されたうえ、ハンドリングも少しシャープになりました。
費用的には明確に覚えていないのですが、確か2-3万円程度であったかと記憶しています。
まとめ
世界が認めるスポーツセダンだけあり、高次元でまとまっているクルマであると言えます。
BMWの哲学が込められているだけに、駆け抜ける歓びが感じられるクルマです。
その流通数もあり、近年では中古価格が非常にこなれてきました。
基本的にそこまで維持のハードルが高い車ではないので、興味のある方は購入を検討しても良いのではと感じます。
ポイントは、乗り味が軽快で重厚感が少ない点、また電気系のトラブルリスクをどう捉えるかといったところでしょうか。
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